エピソード

  • 子どもには「失敗する権利」がある ― 成長発達を支える大人のまなざし ―
    2025/05/16

    🔶「成長発達権」


    ――あまり聞きなれない言葉かもしれませんが、これは子どもが健やかに、そして段階的に人として育っていく権利のこと。児童福祉法や子どもの権利条約にも明記されており、すべての子どもが持つ“当たり前の権利”です。

    しかし近年、その「当たり前」が揺らいでいるのではないか――そんな懸念を語るのが、熊本市立出水南中学校校長の田中慎一朗さんです。


    🔶一発退場の風潮に思うこと

    「最近、“子どもが失敗したら終わり”という風潮が強まっている気がします」

    SNSやネットニュースの炎上。学校名の特定、電話攻撃――。

    たとえ子どもであっても、ミスや失敗があると“一発アウト”のように糾弾され、居場所を失ってしまう。


    「もちろん命に関わる重大事件は別です。しかし、そうなる前にもっと小さな“やらかし”があったはずなんです。その段階で何かできたのではないかと、胸が痛むことがあります」


    🔶報道のあり方、そして「許さない社会」

    ネットだけでなく、メディア報道のあり方にも疑問を感じると田中先生は続けます。

    「報道の目的が“問題提起”であるなら、そこには子どもたちの未来への視点が必要です。でも今は、事件を“エンタメ”のように取り上げているケースもあります」


    たとえば小学校でのトラブル報道で、現場に“こわもての人”が聞き込みに来る演出。

    「スタジオでは笑いが起きていましたが、子どもにとっては恐怖でしかない」

    報じること自体の是非に加え、どう伝えるか、どう見せるかも、今問われているのかもしれません。


    🔶小さなもめごとを、大人が奪っていないか?

    人間関係にすれ違いや衝突はつきもの。

    子ども同士だって、言い合いやケンカを経験しながら、関係性の築き方を学んでいくものです。


    「でも最近は、“もめごとを起こした子”が、即教室から排除されるケースもあります」


    確かに被害を受けた子を守るのは当然ですが、加害側の子の内面や背景にも向き合い、再出発を支える機会をつくることが、学校や社会の役割ではないでしょうか。

    「最初は本当に小さなすれ違いだったのに、大人が過剰に介入して、“人と関わるな”というメッセージに変わってしまう。それが積み重なって、やがて“誰でもよかった”という悲しい言葉につながることもあるんです」


    🔶許さない社会から、「許しを学べる社会」へ

    「失敗をしてしまった子どもに“やり直せる機会”をきちんと設ける。それが教育の原点です」

    指導は必要です。叱ることも、時には必要です。でもそれは“断罪”ではないはず。


    「きちんと向き合わせる、理解させる、そして受け止める。それが大人の責任であり、社会の責任だと思っています」


    🔶地域とともに、子どもを育てる喜びを

    そんな中、田中先生がうれしかった出来事を最後に語ってくれました。

    昨年の体育大会、近隣のショッピングセンター「ゆめタウン浜線」の駐車場を多くの保護者が無断使用し、迷惑をかけてしまったことがありました。

    今年もクレームを覚悟していたところ、施設側からはこう言われたそうです。

    「ここの場所を使ってもらって大丈夫ですよ。子どもたちのためですから」

    「この言葉に本当に救われた気がしました。地域とともに子どもを育てるという当たり前のことを、もう一度思い出させてもらった出来事でした」


    🔶子どもたちは、失敗しながら成長する

    「子どもは失敗するものです。それを“人として当然のこと”として、大人がどう支えるかが問われています」

    社会全体で、子どもたちの“育つ権利”を守る。

    「3ストライクまで待つ社会でありたいですね」と、田中先生は静かに語ってくださいました。


    お話:田中慎一朗さん(熊本市立出水南中学校 校長)/聞き手:江上浩子

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    12 分
  • 物価高のいま、「携帯料金」見直してみませんか?― 斉場俊之さんの通信費アドバイス ―
    2025/05/09

    毎週金曜日は週替わりのゲストコメンテーターをお迎えしています。今日は第2金曜日、ライブ配信ディレクターの斉場俊之さんにお越しいただきました。


    🔶物価が上がる中、携帯料金も?


    斉場さん:「本当に最近、何もかもが値上がりしていますよね。そんな中で見過ごせないのが、携帯電話料金の“新料金プラン”です。実は、ドコモとKDDI(au)が6月からプラン変更を行います」


    江上さん:「えっ、携帯料金まで上がっちゃうんですか?」

    斉場さん:「そうなんです。ただし“値上げ”というよりも“新料金プランへ移行”という形で、既存プランより数百円から千円ほど上がる内容になっています。家族分まとめて契約されている方には、特に影響大ですよね」


    🔶値上げだけじゃない!各社の“付加価値”


    各社とも、ただ値上げするわけではありません。


    両社共通で・・・


    • ポイント(dポイント、Ponta)サービスの強化

    • 電気・インターネットとのセット割引

    といった、まとめるほどお得になるサービス連携も。



    🔶「まとめるか」「分けるか」の判断基準は?


    「まとめた方がいいのは確かにメリットがあるけれど、それが自分に合っているとは限りません。生活スタイルに合った見直しが必要です」

    ポイント還元、光回線、電気、ネット通販…すべてを一社にまとめられるなら、まとめてOK。

    ただし、「他の会社の電気プランが安いのに無理してドコモで統一してしまうと、かえって高くつくケースもあります」



    🔶携帯料金を見直す3つのポイント


    携帯料金を見直すときは、この3点を確認しましょう!


    ① パケット(データ)通信量


    • 動画を外で見る人は通信量がかさむ=高いプランが必要。

    • 自宅Wi-Fi中心で、動画もあまり見ない人は「1GB以下」というケースも少なくない。

    「自分の使っているギガ数を、半年分確認してみましょう。意外と使っていないこともあります」


    ② 通話時間


    • 今はLINEなどで済ませる人が多いため、「通話定額は不要」という人も。

    • 月々数百円の差でも、1年で数千円の節約になります。

    ③ 不要な“付加サービス”に注意


    • 「機種代を安くしますからこのオプション入ってください」という“初期設定のまま”になっている人は要注意!

    • 「1年後に解約できますよ」と言われたまま解約し忘れている人が多い。

    「私の親戚も、見直しただけで月3,000円も安くなりました。年間だと約36,000円です」


    🔶自分の通信環境を“運転”できていますか?


    「携帯料金のプランは、非常に複雑に作られています。だからこそ、“よくわからないからお任せ”ではなく、自分で見て判断する意識が大切です」


    • 使わないサービスは削る。

    • 必要な分だけ払う。

    • ポイントもできるだけ一社に集中させる。

    「通信費を見直すことが、生活防衛に直結します」


    🔶最後にひと言


    「お財布を守るのは自分自身。料金明細を見るクセをつけるだけでも大きく変わりますよ!」



    お話はライブ配信ディレクターの斉場俊之さんでした。
    みなさん、良い週末を。


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    13 分
  • ゴールデンウィークに観たい注目作がずらり― 上妻祥浩さんの映画解説 ―
    2025/05/02
    ― 上妻祥浩さんの映画解説 ―こんにちは、RKKの江上浩子です。毎週金曜日は、週替わりでゲストコメンテーターをお迎えしています。今日は第1金曜日ということで、映画解説研究者の上妻祥浩さんにお越しいただきました。年齢と美をめぐるホラー🔶『サブスタンス』(5月16日公開)👉 公式サイトはこちら → https://gaga.ne.jp/substance/主演はデミ・ムーア。我々世代には『ゴースト/ニューヨークの幻』でおなじみの名女優です。「年齢とともに女優としての仕事が減ったことに悩む主人公が、若さを取り戻す“謎の薬”を手に入れ、もう1人の若い自分が現れる――というストーリーです」次第にその“もう1人の自分”が暴走を始め、物語はグロテスクな方向へ。しかしその裏には、外見至上主義(ルッキズム)や年齢差別への鋭い批評が込められています。「監督も女性で、デミ・ムーアとともに“美の呪縛”に一石を投じる気迫を感じる作品です」歌が家族をつなぐ感動作🔶『父と僕の終わらない歌』(5月23日公開)👉 公式サイトはこちら → https://chichiboku.jp/認知症の父と息子の絆を描く実話に基づいた作品。父を演じるのは寺尾聰さん、息子役には松坂桃李さん。「歌うことで記憶がよみがえる。実際にYouTube動画からレコードデビューまで果たした80代男性の実話をもとにしています」母親役には松坂慶子さん。重いテーマながら、作品全体には明るさがあり、横須賀の美しい風景とともに、希望が描かれます。家族で楽しめる冒険ファンタジー🔶『パディントン:消えた黄金郷の秘密』(5月9日公開)👉 公式サイトはこちら → https://paddington-movie.jp/おなじみ、くまの“パディントン”がロンドンからペルーへ里帰り。吹き替えは松坂桃李さんが続投です。「ちなみに、ウクライナ版第1作の吹き替えを担当したのは俳優時代のゼレンスキー大統領。ちょっとした豆知識ですね」冒険のスリルあり、ユーモアあり。アントニオ・バンデラス演じる敵役も登場し、まさにゴールデンウィークにぴったりの一本です。超絶アクション再び!🔶『ミッション:インポッシブル/ファイナル・レコニング』(5月23日公開)』👉 公式サイトはこちら → https://missionimpossible.jp/トム・クルーズが帰ってきた!本人がスタントを務める姿はもはやジャッキー・チェンさながら。「今作では上空2400mからのジャンプ、プロペラ機上でのアクションなど、想像を超える場面が盛りだくさん。興奮必至です」日本でも海外でも注目度MAXの大作、劇場の大スクリーンでの鑑賞が断然おすすめです。今すぐ観られる話題作🔶『異端者の家』(上映中)👉 公式サイトはこちら → https://happinet-phantom.com/heretic/じわじわと迫る不穏な空気。心理描写の緻密さが光る異色ホラーです。「一言で“ホラー”とは片付けられない奥行きがある作品。観終わった後に深く考えさせられます」🔵最後にひと言「ぜひ映画館で、作品が持つ力を体感してみてください。どのジャンルにも、今の私たちに響く何かが込められています」映画解説研究者の上妻祥浩さんにお話を伺いました。ゴールデンウィークのお出かけ先に、映画館という選択肢も、いかがでしょうか。(聞き手:江上浩子)#サブスタンス #父と僕の終わらない歌 #パディントン #ミッションインポッシブル #ファイナルレコニング #異端者の家📻【ニュース515+plus】エンタメ・教育・ITの専門家が気になる話題を徹底解説!毎週金曜 午後5時15分~ RKKラジオ(FM91.4 / AM1197)で放送中!🎙第1金曜日…映画解説研究者・上妻祥浩さん🎙第2金曜日…ライブ配信ディレクター・斉場俊之さん🎙第3金曜日…熊本市立出水南中学校 校長・田中慎一朗さん🎙第4金曜日…元RKKアナウンサー・宮脇利充さん📧 メール:515@rkk.jp🌐 WEB:https://rkk.jp/515news/
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    13 分
  • 🎸「音楽を進化させる原動力は“過去”だ」 ギターの神様・エリック・クラプトン、80歳。
    2025/04/25

    🔶~宮脇利充の音楽談義~🔶


    こんにちは、RKKの江上浩子です。

    毎週金曜日は、週替わりでゲストコメンテーターをお迎えしていますが、今日は第4金曜日。おなじみ、元RKKアナウンサーの宮脇利充さんにお越しいただきました。


    「こんにちは。今日はですね、久しぶりに“音楽談義”です。久々にちょっと熱く語りたい音楽の話題がありまして…」

    ということで、今回はギターの神様と称されるあの人――エリック・クラプトンについてのトークです!


    🔶クラプトン武道館ライブへ!

    お聴きいただいているのは、エリック・クラプトンの名曲「Old Love」。

    実はこの曲、4月19日土曜日に行われた日本武道館でのライブでも披露された1曲でした。

    「クラプトンのライブに行ってきたんですよ」と語る宮脇利充さん。

    今回の来日ツアーは、2年ぶり。そしてなんと、武道館で全8公演という特別なものだそうです。


    クラプトンの初来日は1974年。以来、日本には24回の来日、武道館では通算110回以上も公演を行っているとのこと。これは外国人アーティストとしては最多の記録です。

    「それだけ日本を愛してくれてるってことですよね。今回も素晴らしい夜でした」


    🔶静かに、穏やかにステージへ。

    開演は夕方5時。場内の照明が落ち、音楽が鳴りやみ、そして…クラプトンが登場。


    「颯爽と、ではなくてね、ゆっくりと歩いて、他のミュージシャンに囲まれるようにして出てきたんです」

    白のコットンシャツに、ジャケットとパンツ。白髪に眼鏡をかけたその姿に、「晩年の大江健三郎さんを思い出した」という宮脇さん。

    「佇まいがもう、ジェントルマンなんですよ。静かで、でもそこにいるだけで“只者じゃない”っていう空気がありましたね」


    🔶曲によって見える“神様の現在地”

    公演は全16曲、約1時間45分。途中アコースティックセットも挟みながら進みました。

    「正直、曲によっては“もうちょっとしっかり押さえて…”と言いたくなるところもあった」と宮脇利充さんは率直に語ります。「でもそれは僕が“全盛期のクラプトン”と比べてしまっているから」。

    中でも印象的だったのは「Old Love」と「Crossroads Blues」。

    ブルースの巨人ロバート・ジョンソンの名曲でもある後者は、まさにクラプトンの真骨頂ともいえる名演だったそうです。


    🔶音楽は「再解釈」で進化する ~読売新聞インタビュー~


    そして、クラプトンが読売新聞のインタビューで語っていたことも紹介してくれました。

    「音楽を進化させる原動力は“過去”だ。私はいつも過去の音楽に立ち返る。

    再解釈することで、新しい音楽が生まれる。それが僕らの責任なんだ」


    この言葉に、宮脇さんは深く頷きます。

    「小説家も映画監督もそう。過去の作品を読み解き、自分なりに再構築して新しい作品を作っていく。クラプトンもまさに、そういう“再解釈の達人”なんだと思いました」


    🔶今も少しはロックンローラーだ

    インタビューの最後、記者がこう尋ねたそうです。

    「80歳になってもロックミュージシャンでいるとは思っていましたか?」


    クラプトンの答え――

    「今も少しはロックンローラーだ」

    「客席を見渡せば、僕も含めて中高年がほとんど。でもステージに立つ彼が一番輝いていた。本当に、それってすごいことだと思うんです」


    次回の音楽談義もどうぞお楽しみに。


    お話は、元RKKアナウンサー 宮脇利充さんでした。

    (聞き手:江上浩子)


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    12 分
  • 子どもたちの「学びの多様化」に向けて──出水南中学校の新たな取り組み
    2025/04/18
    🔶【子どもたちの「学びの多様化」に向けて──出水南中学校の新たな取り組み】春、新しい学年、新しい環境が始まる季節。熊本市立出水南中学校では、今年度から“子どもたちの多様な学び方”を支える新しい取り組みがスタートしました。第3金曜日の放送では、出水南中学校 校長の田中慎一朗さんと、生徒支援主事の荒木繁先生をお迎えし、新たに設けられた「学びの多様化学級」について、お話を伺いました。🔶生徒指導を「二本立て」に「これまで“生徒指導主事”というと、どうしても“生活指導”や“厳しさ”のイメージが強かったですよね」と語る田中校長。しかし今年度から出水南中学校では、生徒指導の体制を見直し、“学びや心のサポート”を担う専任教員として、「生徒支援主事」を新設。その任にあたるのが、荒木繁先生です。「子どもたちの不登校やいじめ、教室に入りづらいという悩みに、学年を問わず寄り添っていくポジションです」と田中校長。担任や学年に所属しないことで、より柔軟に全校生徒に対応できる体制を整えました。🔶「復帰」をゴールにしない、新しい学級こうした体制強化に加えて始まったのが「学びの多様化学級(通称:CDL = Customized Diverse Learning)」です。「これは、“元の教室に戻ること”をゴールにしないという、これまでの考え方とは大きく違う取り組みです」と荒木先生。「学校の教室では集中しづらい」「集団の中にいるのがどうしてもしんどい」と感じる子どもたちが、安心して過ごし、自分のペースで学び続けられる場所を、学校の中につくろう。そんな思いから生まれた学級です。これまでも学校内にサポートルームのような場はありましたが、そこは主に自習の場でした。今回の「学びの多様化学級」では、それに加えてソーシャルスキルトレーニングや、子どもたちの趣味や特技を活かした活動など、より広がりのある学びを意識しています。 🔶子ども自身が「今日を選ぶ」空間「この部屋では、子どもたち自身がその日一日をどう過ごすかを決めます」その言葉通り、CDLの教室はまさに“選べる空間”。パーソナルスペース、協同学習スペース、リラックスエリア…と、5種類の座席環境が用意されており、子どもたちはその日の気分や体調に応じて、自分で場所を選びます。「時間割もありません。今日はここで学びたい、今日は静かに過ごしたい…それを自分でデザインして、振り返る。その“自己決定”の積み重ねが、自信や意欲に繋がっていくんです」と荒木先生。室内には、ソファーやぬいぐるみも。「他の先生方が“使ってくれたら”と持ち寄ってくれたんですよ」と田中校長は笑います。また、学級には校内教育支援センターの支援員も常駐。個別指導や相談にもすぐに対応できる体制です。🔶目指すのは「登校」よりも「変化」この学級の着想のもとには、先進事例として視察した広島県の取り組みもありました。「広島では、目標は“登校させること”ではなく、“その子にとって好ましい変化を目指すこと”だと教わりました」そう語る田中校長は、「それまで私たちは“学校に戻ってきたら成功”という価値観にとらわれていたかもしれない」と、はっとさせられたと話します。「どんな場所にいても、自分で“今日来てよかった”と思えることがある。それがまず何より大切だと考えるようになりました」と荒木先生。実際に、「まだ子どもは行けないけれど、まず保護者だけ見せてください」と学校を訪れるケースもあり、ニーズの高さを実感しているといいます。 🔶子どもたちが、自分らしくいられる場所に「最終的には、ここに来ることで“自分らしく過ごせる”“学べる”と感じられる場所にしたいんです」そう力を込める荒木先生。“普通の教室”では息苦しさを感じていた子どもたちが、「今日はこれができた」「ちょっと楽しかった」と思える場所に。登校できなかった日々も、決して“後れ”ではなく、「自分を知るための時間」だったと思えるような学びの形を目指しているのです。「1人ひとりの子どもを、大切にしたい。その思いは、何があっても揺...
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    13 分
  • 春、SNSの“交通整理”を──リアルと繋がる世界で考えるべきこと
    2025/04/11
    🔶【春、SNSの“交通整理”を──リアルと繋がる世界で考えるべきこと】新生活が始まる春。進学や就職で環境が大きく変わるこの季節、「SNSの使い方」も、少し立ち止まって見直してみませんか? そう語るのは、ライブ配信ディレクターの斉場俊之さん。今回はSNSにまつわる「情報の交通整理」の大切さについて話してくださいました。 🔶現実とSNSの境目が、なくなっている今「SNSは、もはやネット上の“別世界”ではないんですよね」たとえばアメリカの大統領が、記者会見より先にSNS(旧Twitter/現X)でメッセージを発信することがあるように、いまやSNSは、リアルな社会と地続きの場。「昔みたいに“ネットはネットだから”って言い訳できる時代じゃないんです。リアルな人間関係や生活に直結しているからこそ、使い方には配慮が必要です」 🔶自分に合ったSNSだけでいいいまやSNSと一口に言っても、X、Instagram、Facebook、TikTok、LINE、YouTube…と無数にあります。「でも、全部やる必要はないんです。自分が使いこなせる範囲、自分の生活リズムに合ったSNSだけで十分。車の運転と一緒で、扱えないものに無理に乗る必要はない」パスワードがわからなくなる、通知が追えない、情報が溢れて疲れてしまう…という人も多いはず。まずは“使いこなせるかどうか”で取捨選択してOK。それが、SNSを自分のものにする第一歩です。 🔶SNSにおける「3つの注意点」では、新生活に向けて、どんなことに注意すべきなのでしょうか。斉場さんは3つのポイントを挙げてくれました。① 発信内容の“拡散リスク”を忘れないたとえば「桜がきれいでした」と何気なく投稿した写真から、通勤・通学ルートや勤務先、学校が特定されてしまうことも。「見ているのは友達だけじゃない。見知らぬ誰かが、あなたの投稿から“情報”を拾っているかもしれない。写真や文の中に、知らず知らず個人情報が入り込んでないか、今一度見直してほしいんです」また、勤務先や学校のルールでSNSへの投稿が制限されている場合もあります。「うっかり」では済まされないこともあるので、事前に確認しておくのが安心です。②「繋がる相手」は選んでいいLINEやインスタで「交換しましょう」と言われたとき、「NO」と言いにくい空気、ありますよね。でも…。「自分のSNS空間には、自分で“誰を入れるか”を決めていいんです。特に、仕事とプライベートは明確に分けること。プライベートなLINEに業務連絡が飛び込んでくると、気が休まりません」そんなときは、思い切ってこう伝えても大丈夫。「LINEはプライベートで使ってますので、仕事の連絡は〇〇でお願いします」最近では、LINE WORKSやSlackなど、ビジネス向けのチャットツールも浸透してきています。会社側がこうした環境を整えることも、若い世代の離職防止につながるかもしれません。③ 子どもたちのSNSにも、大人のまなざしをスマホを持ったばかりの子どもたちは、まだトラブルを予測する力が育ちきっていません。「友達にLINEを教えたら、グループ内で悪口を言われて…」というケースも実際に起きています。SNSでのやりとりは表に出づらく、発見が遅れることも。「だからこそ、保護者の皆さんには“携帯を見る権利が家庭にある”と伝えてほしい。そして、日々の小さな変化を見逃さないようにしてほしいんです」 🔶SNSはリアルを豊かにするために「SNSって、現実をもっと楽しく、便利にしてくれるツールであるべきなんですよね」斉場さんの言葉には、リアルな人と人との繋がりを何より大切にしている姿勢がにじんでいました。新しい学校、新しい職場、新しい街。そのどこかで、誰かと繋がるとき、SNSが役に立つこともあるでしょう。けれどそれは、あくまで“道具”としての話。「SNSの中の自分が主役になってしまわないように。自分の“リアル”を幸せにするために、SNSを上手に使ってほしい」春、情報の交通整理をして、新しい一歩を安心して踏み出してみませんか?(聞き手:江上浩子)
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  • 2025年春の注目映画レビュー ――時を越え、真実を問う話題作が続々登場!
    2025/04/04
    2025年春の注目映画レビュー――時を越え、真実を問う話題作が続々登場!春は別れと出会いの季節――そんな今こそ、大きなスクリーンで物語の世界にひたってみませんか? 映画解説研究者の上妻祥浩(こうづま よしひろ)さんが、4月に公開される注目作3本をご紹介くださいました。個性的な演出と深いメッセージが詰まった作品ばかりです。まずは少し寂しい話題から。熊本市の「ユナイテッド・シネマ熊本」が3月末で閉館しました。交通の便がよく、学生たちにも親しまれてきた映画館の閉館に、惜しむ声も多く聞かれます。とはいえ、映画の魅力はまだまだ尽きません。この春も、劇場でしか味わえない名作があなたを待っています!🎦 『HERE 時を越えて』(4月5日公開)一つの場所を“定点カメラ”で映し続けるというユニークな手法で、壮大な時の流れと人間ドラマを描き出す話題作。監督は『バック・トゥ・ザ・フューチャー』『フォレスト・ガンプ』のロバート・ゼメキス。主演のトム・ハンクスは10代から70代までの同一人物を、デジタル技術を使って見事に演じ分けます。恐竜が歩く太古から未来まで、同じ場所に立つ家を舞台に、世代を超えて紡がれる人生の断片。カメラは動かず、家からもほとんど出ない。それでも画面から目が離せないのは、そこに“生きている”人間の姿があるから。映画の常識を覆す、まさに“映像の魔法”。劇場で体験すべき一作です。👉 公式サイトはこちら https://here-movie.jp/🎦 『アンジェントルメン』(4月5日公開)タイトルは“紳士”ですが、登場するのはまったく“紳士的でない”極秘部隊!第二次世界大戦下、ナチスドイツに押されるイギリスで、チャーチル首相が極秘に結成した少数精鋭の部隊。その中心人物は、ジェームズ・ボンドのモデルの一人ともされる実在の軍人です。諜報活動に携わっていたボンド原作者イアン・フレミングも登場し、歴史とフィクションが交錯するスパイアクションが展開。音楽はまるでマカロニ・ウエスタンのように殺伐とした雰囲気を漂わせ、スタイリッシュながらもシリアスな空気感が印象的。ミッション・インポッシブルや往年の戦争映画を彷彿とさせる、骨太な娯楽作です。👉 公式サイトはこちら https://ungentlemen-movie.com/🎦 『#真相をお話しします』(4月25日公開)タイトルに「真相をお話しします」とありながら、“詳細は話せません”。暴露系の生配信番組を舞台に、参加者たちが視聴者からの投げ銭を目当てに、自らの“告白”を始める――という現代ならではのサスペンス。原作は短編ミステリー集で、劇中でも1話ずつ語られるエピソードが少しずつつながっていきます。主演はMrs. GREEN APPLEの大森元貴さんと、timeleszの菊池風磨さん。ナチュラルかつリアルな演技で、現代社会への鋭い批評性をもたらしています。後半に待ち受けるどんでん返しは、劇場でぜひ体感していただきたい“言えない”魅力。観る前に情報を入れず、真っさらな状態で楽しむのがおすすめです。👉 公式サイトはこちら https://shinso-movie.jp/🎬 春、スクリーンの中で“旅”をする。映画館が減りつつある今だからこそ、大きなスクリーンで味わう物語の旅は、かけがえのない体験になるはずです。『HERE 時を越えて』では時間を、『アンジェントルメン』では歴史を、『#真相をお話しします』では真実をめぐって――それぞれの世界が観る人を待っています。春の休日に、少しだけ現実を離れて、映画の中で“時空の旅”をしてみてはいかがでしょうか。📻【ニュース515+plus】エンタメ・教育・ITの専門家が気になる話題を徹底解説!毎週金曜 午後5時15分~ RKKラジオ(FM91.4 / AM1197)で放送中!🎙第1金曜日…映画解説研究者・上妻祥浩さん🎙第2金曜日…ライブ配信ディレクター・斉場俊之さん🎙第3金曜日…熊本市立出水南中学校 校長・田中慎一朗さん🎙第4金曜日…元RKKアナウンサー・宮脇利充さん📧 メール:515@rkk.jp🌐 WEB:https://rkk.jp/515news/
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  • この春、静かに語られなかった「80年談話」
    2025/03/28
    🔶【“謝罪を続ける宿命”を超えて──戦後80年談話を巡る思索】ある朝、宮脇利充さんはいつものように新聞を開いていて、一つの記事に目が留まりました。見出しには、**「石破内閣、戦後80年談話を見送り」**とあります。「へえ、そうなんだ」と読み進めながら、やはり複雑な思いがわいてきたそうです。「戦後80年というのは、被爆からも80年。日本が核兵器や戦争について、もう一度明確に言葉にする節目の年だと思うんです」この節目に、首相としての公式談話を出さない。もちろん、談話というのは“出すことが義務”ではありません。でも、だからこそ、出さないという選択には意味が宿ってしまう。宮脇さんは、少し残念そうな表情で語ります。 🔶「語らない」という選択が示すもの歴代の政権では、10年ごとに“首相談話”が発表されてきました。1995年の村山富市内閣、2005年の小泉純一郎内閣、2015年の安倍晋三内閣──。特に安倍首相の談話は、これまでの流れとはやや異なるものでした。「自分の代で、10年ごとに繰り返されるこの“謝罪の談話”を終わらせたい」という思いがあったと言われています。その真意を知るために、宮脇さんが手に取ったのが、船橋洋一著『宿命の子 安倍晋三政権クロニクル』。文藝春秋から上下巻で出版されたこの本には、あの戦後70年談話がどのようにして練られ、どれほど多くの人々の手を経て形になったのかが、丹念に描かれています。 🔶自分の言葉か、閣議決定かそもそも安倍さんは最初、「閣議決定」という手続きを避けて、自分個人の言葉として談話を出したいと考えていたそうです。「けれども、それには何の意味があるのか?」と政務秘書官の今井尚哉氏や、当時官房長官だった菅義偉氏に諭され、最終的に閣議決定の形をとることに。つまり、「個の想い」からスタートして、「国としての立場」に着地するまでに、多くの葛藤と調整があったのです。 🔶言わない自由と、表現の工夫たとえば、それまでの村山・小泉談話では「我が国は侵略した」とはっきり明記されていました。しかし安倍談話では、主語が消え、『事変、侵略、戦争。いかなる武力の威嚇や行使も、国際紛争を解決する手段としては、もう二度と用いてはならない』と一般論のように語られます。また、お詫びの言葉も、「歴代内閣の立場は揺るぎない」と記述されるのみで、あらためて自らが謝罪する表現は避けられています。「そういった意味で、“言いたくないことは言わない”。でも、どう伝えるかにはものすごく工夫がされていたんですね」と宮脇さん。 🔶談話を支えた、数多くの声この談話づくりには、実に多くの人たちが関わっていました。政治学者の北岡伸一氏をはじめとする有識者会議、元読売新聞主筆の渡邉恒雄氏(ナベツネ)や、アメリカ大使キャロライン・ケネディ氏の意見も反映されているといいます。たとえば、「深く頭を垂れ、哀悼の意を表する」という一文は、ナベツネ氏のアドバイスによるもの。また、慰安婦問題への言及は、女性の人権への言及として、慎重に表現されています。 🔶“宿命”をどう引き受けるのかそんな中、心に残る一文があります。「私たちの子や孫、さらにその先の世代の子どもたちに、謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」この言葉は、安倍さんが一番伝えたかったことかもしれません。そして続けてこうも書かれています。「しかし、それでもなお、私たち日本人は、世代を超えて過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません」つまり、“謝罪を終わりにしたい”という想いと、“それでも歴史と向き合う覚悟”が、同時に存在していたということなのです。 そして、今──今、石破首相が戦後80年談話の発表を見送ることは、「語らない」という選択をすることです。「石破さんが、安倍談話に違和感を持っていたのであればこそ、自らの言葉で語ってほしかった。党内基盤が弱くて発表できないというのは、とても悔しい話だなと思います」宮脇さんはそう語ります。戦後という時間の中で、どの言葉を選び、どこまで語るのか──それは、政権...
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    13 分