
「褒める」とは何か――子どもの強みを引き出すためにできること
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🔵「褒める」とは何か――熊本市立出水南中学校校長・田中慎一朗さんに聞く
「褒める」という行為は、子どもの成長や自信を育む上で重要だと広く言われています。
しかし、その褒め方や意図次第では、子どもの心に届かないどころか、逆効果になることさえある――。
熊本市立出水南中学校の田中慎一朗校長は、「褒めるとは何か」について、私たち大人が改めて考える必要があると語ります。
🔶褒めることは「伸ばす前提」になっていないか
私たちはしばしば、「褒めて伸ばす」という表現を使います。
これは一見、子どもの良さを引き出すポジティブな姿勢に見えます。
しかし田中校長は、この「伸ばす前提」の褒め方に疑問を投げかけます。
「褒めることで、子どもに何かを期待したり、伸ばそうとしたりする気持ちが先行してしまうと、子どもは『自分が本当に評価されているわけではなく、大人の意図でコントロールされようとしている』と感じることがあるのです」
特に中学生は、その鋭い感受性で大人の意図を敏感に察知します。
無理に褒めようとしたり、表面的な言葉で取り繕うと、むしろ反発を招くこともあるのです。
🔶大切なのは「その子の努力や変化を見つける視点」
田中校長は、子どもの頑張りに気づくためには、日頃からの観察と関心が不可欠だと強調します。
「たとえば、45分間の授業でずっと座っていられたこと。それは、動きたくて仕方がない子にとっては大きな努力の結果なんです。その小さな変化を見つけて、『頑張ったね』『今日は落ち着いて聞けていたね』と声をかける。それが本当の意味での褒める、認めるということだと思います」
褒めることは、点数や目に見える成果だけで判断するのではなく、その子の努力や成長に寄り添うこと。それが子どもにとっての「自分は見てもらえている」という安心感につながります。
🔶外発的動機づけと内発的動機づけ――どちらを育むか
「100点を取ったらご褒美をあげる」という外発的動機づけは、短期的には効果的かもしれません。
しかし田中校長は、長い目で見れば「内発的動機づけ」、つまり子ども自身の内側から湧き上がる興味や意欲こそが重要だと言います。
「知識を得ることが面白い、もっと知りたい、学ぶって楽しい――そう思えるような関わりを、日常の会話や学校の授業の中で積み重ねていく必要があります」
褒めることはそのための手段であり、目的ではないのです。
🔶大人自身が「リスペクト」をもって接する姿勢を
田中校長自身、「自分ができないことを、子どもができている場面に出会うことがある」と言います。
そんなときこそ、「すごいね、それどうやってるの?」と素直に尋ね、リスペクトを示すことが大事だと話します。
「褒めるために無理にポイントを探すのではなく、その子の良さ、強みを認め、リスペクトする。そうした積み重ねが、子ども自身の自信や次の挑戦への意欲につながると思うのです」
🔶普段からの関わりが、褒める力になる
最後に田中校長は、こう結びます。
「子どもたちは、大人の言葉や視線をとてもよく見ています。だからこそ、日々の関わりの中でその子を知り、小さな変化や努力に気づいて声をかけてほしい。それが子どもたちの心に届く“褒める”ということなんです。ぜひ、子どもたちと対話を重ね、認める言葉をかけてあげてください」
「褒める」とは、子どもを育てるだけでなく、大人自身の成長を促す営みでもあるのかもしれません。
出演
熊本市立出水南中学校校長・田中慎一朗さん
聞き手:江上浩子