エピソード

  • 株式市場はどのようにして関税の嵐を切り抜けているのか
    2025/07/14
    関税を巡る不透明感が続く中、株価は安定的に推移しています。最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、政策の先送り、底堅い企業収益およびフォワードガイダンスが株式市場に与えている影響についてお話します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は、最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンが、株式市場が引き続き極めて底堅く推移している理由についてお話します。このエピソードは7月14日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。新たな関税が発表されたにもかかわらず、なぜ株式市場は底堅く推移しているのでしょうか?まず第1に、USMCA準拠のメキシコからの輸入品のように、課税の先送りや除外がまだ実施されていることから、S&P 500構成業種が輸入価格から受ける影響が小さいためです。第2に、今般発表されたいくつかの貿易相手国に対するより高い関税率は、今後交渉が進展するため、最終的な税率にはならないと一般に考えられています。筆者は引き続き、こうした関税は最終的に輸入品に対する10%の消費税のような形に落ち着き、財務省に大きな税収をもたらすと見ています。そして第3に、多くの企業は関税が課される前に在庫を備蓄しており、商品の価格上昇がまだ売上原価に反映されていません。さらに、関税に対する市場の懸念は4月のはじめにピークに達し、市場は測定可能なデータに期待し、注目しました。このため、EPS予想のリビジョン・インデックスの劇的なV字回復が、ファンダメンタルズの追い風として、4月以降、貿易とマクロ経済の不透明感が続くなかでの株価上昇を正当化しています。これは株価予測で弊社が最もよく利用する指標の1つで、4月半ばにマイナス25%で底をつけました。現在はプラス3%となっています。S&P 500との比較で、リビジョン・インデックスが最も大幅なプラスになっている業種は、金融、鉱工業およびソフトウェアです。こうした動向を理由に弊社はこの3つの業種を引き続き推奨しています。もう1つ、株価の下支えに寄与しているより最近の展開は、「One Big Beautiful Bill」法案が可決されたことです。この法案は、景気テコ入れとしての財政支出を増額するものでも、法定税率を引き下げるものでもありませんが、研究開発費と資本財の両方に多額の支出を行なっている企業の現金収益に対する税率を引き下げる内容になっています。 弊社グローバル税制担当チームは、現金収益に対する税率が現在の20%から、2022年に失効した「減税および雇用法」の恩恵を受ける前の13%前後に向けて低下する可能性があると考えています。この恩恵が、米国企業の低調な設備投資サイクルの活性化につながることも見込まれます。そうなれば、GDPの成長と、このカテゴリーへの支出に該当する設備を提供する企業の増収の両方を促進する可能性があります。一方、外国稼得無形資産所得は、国外の市場で所得を得ている米国企業に恩恵を与える優遇税制です。企業が知的財産を米国より税率が低い国に移転せずに米国内に維持することを奨励するように設計されています。この控除は2026年に縮小される予定でした。そうなれば、実効税率はおよそ 約3%上昇します。「One Big Beautiful Bill」法案によってそのリスクはなくなりました。最後に、海外事業を展開するオンライン企業に対するデジタルサービス税が、引き下げられる可能性があります。先月下旬、カナダが、米国との互恵的な包括的貿易協定を見込んで、米国企業に対するデジタルサービス税を廃止する方針を発表しました。これは、オンライン企業にとって予想外の恩恵で、欧州をはじめとする他の諸国が米国との貿易交渉でカナダに追随する可能性があるとの見方もあります。結論としては、関税を巡る不確実性が大きい状況に変わりはありませんが、向こう1...
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  • 米国の消費者は関税の懸念を克服したのか
    2025/07/07
    米国の消費者は単に出費を控えているのではなく、お金の使い方と貯め方を変えている――弊社の米国テーマ別リサーチ・株式ストラテジストのミシェル・ウィーバーがデータを掘り下げてお話しします。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。米国テーマ別リサーチ・株式ストラテジストのミシェル・ウィーバー, 本日は弊社米国テーマ別リサーチ・株式ストラテジストのミシェル・ウィーバーが、米国民によるお金の使い方と貯め方、そして将来の見方に生じている変化についてお話しします。 このエピソードは7月7日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。インフレの緩和、変化している政治、さらには関税をめぐる絶え間ないノイズなど、種々雑多な情報を市場が消化するにつれ、米国の消費者はものの見方を微調整しています。主要な経済指標の表面をめくれば、米国民がマクロ経済の困難に単に反応するだけでなく適応しようとしており、そこで複雑なストーリーが展開されていることが見えてきます。まず、大まかなところから見ていきましょう。弊社が行った最新の消費者調査のデータによれば、関税をめぐる不確実性が残っているなかでも、それも特に相互関税停止措置の期限が迫っているこのタイミングにおいても、消費者心理は安定してきています。調査回答者のほとんどは最大の懸念材料にインフレを挙げていますが、幸いなことにその割合は縮小傾向にあります。インフレが主たる懸念材料だという回答は当月も全体の半分以上を占めましたが、前月比でも前年同月比でも若干減少しています。消費者が継続的な物価上昇の衝撃に備えるのではなく、インフレ期待を調整している可能性を示唆しているという意味で、微妙ではあるもののこの現象は重要です。ただこれと同時に、政治を懸念する声も強まっています。今では消費者の40%以上が、米国の政治環境を主要な不安材料のひとつに挙げており、その割合が前月より若干大きくなりました。また意外なことではありませんが、地政学的な紛争への懸念も前月より大幅に強くなりました。次に、このデータを所得階層別に分けてみます。すると、興味深いトレンドが浮かび上がってきます。インフレはすべての階層で最大の懸念材料になっていますが、15万ドル超の階層だけは例外で、政治が最も懸念されています。また、所得の低い世帯が家賃の支払いや債務返済を気にしている一方で、所得の高い世帯はそれよりも自分たちの投資のほうを気にしています。関税に対する関心も高いのですが、こちらは安定しています。消費者のおよそ 約40%は非常に強い不安を、25%はある程度の不安をそれぞれ感じています。しかしこのデータを少し掘り下げると、実は政治的分断がここに現れていることが分かります。リベラル派の63%が関税を非常に懸念していると答える一方で、保守派ではその値がわずか23%にとどまっているのです。しかし、こうした数々の懸念にもかかわらず、全体的に見れば支出を切り詰めようとしている人は少なめです。関税を理由に支出を減らすという回答者は全体のおよそ3分の1にとどまっており、今年の前半に比べればかなり少なくなっています。また、およそ4分の1は支出を増やす計画だとしており、ざっと3分の1は支出の計画を変更するつもりは全くないと答えていました。この底堅さは、本日冒頭でお話しした注目すべき消費者行動のトレンドを示しています。消費者は単に反応しているのではありません。適応しているのです。弊社の調査によれば、米国経済全体で見た消費者信頼感は、前月より若干低下したとはいえ安定しています。しかし消費者から世帯に目を移すと、見通しは明るくなります。家計の改善を見込む世帯がかなり多い一方で、悪化を見込む世帯は少なく、差し引きプラスとなるのです。貯蓄もある程度の底堅さを示...
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  • 米国の債務物語
    2025/07/03
    (米国)独立記念日の特別なエピソードとして、コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、祝日だけに限らずいつでも議論でよく取り上げられる国家債務について考察します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。コーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツ, 本日はコーポレート・クレジット・リサーチ責任者のアンドリュー・シーツが、米国債務の歴史のほか、企業債務と連邦政府債務の軌道の違いについてお話しします。このエピソードは7月3日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。米国が英国からの独立を宣言したことを記念して定められた7月4日の独立記念日は今も私の大好きな祝日の一つです。友人や家族と集まり、米国の現状や可能性を祝う日です。もちろん、これは債務について話をするうまい口実でもあります。独立を宣言するのは文書で済むことですが、当時世界最大の帝国と戦い、勝利を収めるのは詩的な言葉だけではなしえないことでしょう。植民地の勝利を可能にした借り入れは、1780年代には持続不可能な債務の山としてこれらの植民地を破滅寸前に追い込みました。各植民地にうまく働きかけてこれらの債務を連邦政府の下に一つにまとめたのは、若き財務長官アレクサンダー・ハミルトンでした。国を一つにまとめ、より低い借り入れコストを確保したのです。いわば、紛れもない債券のウィン・ウィンです。250年近くが経過したいま、こうした先見の明による恩恵はなおも強力に息づいており、米国は世界最大の経済規模を誇り、最大かつ最も流動性の高い株式・債券市場を有しています。しかし最近、この債券市場が大きすぎるかどうかがいっそう注目されています。米国は現在、GDPのおよそ 約7%に相当する財政赤字を抱えており、上下両院の現在の予算案では、すでに膨大な額に膨れ上がった債務が今後10年間でさらに4超ドル増える可能性があります。さらに先の予測を見ると、状況は一段と厳しくなりそうです。米国政府の債務返済能力については心配していません。はっきり言うと、当面、経済成長が鈍化し、FRBが2026年に予想を上回る回数の利下げを行うのに伴い、米国債利回りは低下すると弊社は予想しています。しかし、こうした借り入れやそれに伴う不確実性によって、長期債のリスクプレミアムが上昇し、イールドカーブはスティープ化するでしょう。従って、米国の独立記念日を祝い、借り入れについて議論する中で、プレゼントの包みをいま開けようとしているのは実際には企業であるということに注目すべきです。政府とは対照的に、企業のバランスシートは非常に良い状態で、企業の債務トレンドは政府の債務トレンドと乖離しています。この背景には多くの要因があります。企業は高い収益性を維持しているほか、コロナ禍が去った後、魅力的な金利で債務の借り換えを進めています。そして足元の不確実性により、経営陣は保守的な姿勢を強めています。7月4日に敬意を表して、私はこれまで米国に焦点を当ててきましたが、欧州でも同じ傾向があります。欧州では、前年比ベースで、より保守的なバランスシートの傾向や、政府に比べて債券発行額が少ない傾向が見られます。企業の借り入れが相対的に少なく、政府の借り入れが相対的に多い中で、企業と政府が支払う金利の差、つまりしばしば話題に上るいわゆるスプレッドが、然るべき水準よりも低く、圧縮された状態が続く可能性があると思います。これが必ずしもシングルB以下などの低格付けの借り手に当てはまるとは考えていません。こうした借り手の場合、より良いバランスシートの傾向がそれほどはっきりしないからです。しかし全体的には、企業と政府のバランスシートの乖離傾向は、社債の投資家にとって週末に祝うべきさらなる材料となるでしょう。...
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  • AIがもたらし得る不動産業界の変容
    2025/07/01
    米国REIT・商業用不動産担当アナリストのロン・カンデムが、生成AIがどのようにして不動産業界全体で340億ドルの節減をもたらすのか、そして最も節減が有望視される分野についてお話します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。商業用不動産担当アナリストのロン・カンデム, 今回は、米国REIT・商業用不動産担当アナリストのロン・カンデムが、生成AIによってどのようにして不動産業界が340億ドル節減できるのか、そして節減が最も期待できる分野についてお話しします。このエピソードは7月1日にニューヨークにて収録されたものです。 英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。不動産業界の将来は、立地が全て…ではなく、自動化が全てだとしたらどうなるのでしょうか?AIが不動産の需要にどのような影響を与えるか、正確に判断するには時期尚早かも知れませんが、事業運営の効率を高めることで、不動産事業を変容させつつあると言うことはできるでしょう。もし、あなたが顧客として不動産会社と取り引きするとしたら、バーチャル賃貸アシスタントとやり取りすることができるでしょう。そして賃貸契約書の作成で、AIの助けを借りれば、何時間も何日もかけることなく数分で済むでしょう。事実、弊社の最近の研究によれば、生成AIによって不動産投資信託(REIT)業界に従事する50万人の仕事の40%近くを自動化できると見られます。実際のところ上場REITおよび商業用不動産(CRE)サービス企業162社の人件費は合計920億ドルで、その財務面への影響は営業キャッシュフローの15%超に相当する340億ドルにのぼる可能性があります。弊社独自の求人データベースによれば、自動化の可能性がある上位4職種は管理職です。そこで、中間管理職、営業、事務所・業務支援および設備メンテナンス・修繕について考えて見てください。REITとCREの特定のサブセクターは、他の領域より大きな恩恵を受けると見られます。例を挙げると、宿泊・リゾート施設は、仲介・サービスや、ヘルスケアREITとともに、労働の自動化によって営業キャッシュフローが15%以上改善する可能性があります。その一方で、カジノ、トリプルネット、トランクルーム、ショッピングモール、さらにはショッピングセンターですら、恩恵は5%未満と見られ、このことから業界全般で影響が様々であることがうかがわれます。中でも仲介・サービスは自動化に伴う伸び代が最も大きく、営業キャッシュフローが34%近く増加すると見られます。こうした企業は、大規模な生成AI採用が最も進んでいる可能性があります。弊社が見るに、こうした企業にとってのメリットは人件費節減だけでなく、生成AIツールによる生産性向上とデータセンター取引を通じて、売上高の機会も拡大すると見られます。宿泊・リゾート施設は職務の自動化を通じて予想される営業キャッシュフロー拡大の余地が23%と、2番目に大きい分野です。こうした事業にAIを一体化すれば、オペレーションの合理化だけでなく、投資収益率やM&Aの新たな道筋を開くことにもなります。既に事業運営でAIを利用している企業もあります。例を挙げると、一部のトランクルーム会社は、AIを自社のデジタル基盤に統合しており、顧客とのやり取りの85%は、デジタル化された選択肢から自己選択されています。その結果、AIを活用した人員配置の最適化を通じて、現場での労働時間がおよそ 約30%削減されました。同じように、アパート会社の中にはAIを活用した顧客とのやり取りおよびオペレーションの効率化を通じて、フルタイムの職員を2021年からおよそ約15%削減した企業もあります。一方でAI採用の増加は、AIのイネーブラー企業に新たな売上高をもたらしています。データセンター、特殊不動産、CREサービスといった事業は、生成AI関連のインフラ構築によって、大幅な上振れの可能性があります。高度な売上高管理システム、顧客獲得ツール、予測的解析...
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  • 高成長と低ボラティリティを背景にアウトパフォームするインド株
    2025/06/24
    アジア担当チーフ株式ストラテジストのジョナサン・ガーナーが、弊社がアジアの株式市場の中でインドを最も選好する理由を説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。今回は、アジア担当チーフ株式ストラテジストのジョナサン・ガーナーが、インド株の長期シナリオに対して弊社が前向きなスタンスを維持している理由をお話しいたします。このエピソードは6月24日にシンガポールにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。弊社は以前から、インドの経済と株式市場に対して強気な見通しを維持してきました。過去5年間のドルベースのトータル・リターンは、MSCI Indiaが145%だったのに対し、世界全体は94%、新興国市場はわずか39%でした。主に3つの理由から、弊社はアジアの株式市場の中でインドを最も選好しています。第1は、インドの優れた経済成長と企業収益成長です。第2は、関税から受ける影響が相対的に小さいことです。そして第3は、国内の強力な投資家基盤です。これらが合わさって、アジアだけでなく全世界に対しても構造的なアウトパフォーマンスにつながっており、さらにボラティリティは比較対照市場に比べて大幅に低い水準にあります。それではより詳しく見て行きましょう。まずは、マクロ経済環境です。今後10年間の世界全体のGDP成長の上昇幅の20%をインドが占めると弊社は予想しています。電力、港湾、道路、貨物輸送システムにおけるインフラの強化や、上下水道や病院と言った社会インフラへの投資のおかげで、製造業の競争力が改善しています。加えて、インドでは中間層が拡大し、様々な製品カテゴリーの企業に商機を提供しています。盤石な国内消費、官民の設備投資と法律分野など構造改革の継続が牽引する堅調な投資サイクルがあります。1QのGDP成長率は7%を超え、弊社チームは中期的に6%超を予想しています。これは、他の主要国を大きく引き離して最も高い水準です。さらに、堅調な企業の利益成長を見込む弊社予想にも変わりありません。コロナ禍以降、MSCI Indiaのドルベースの1株利益は年間12%前後の成長を遂げています。これに対して新興国市場全体は、一桁台前半の成長でした。また、弊社は向こう2年のMSCI Indiaの通期1株利益の成長率を、それぞれ14%、16%と予想しています。目先の成長ドライバーには、始まったばかりの民間設備投資サイクル、企業バランスシートにおけるレバレッジの再拡大、裁量消費支出の構造的拡大などがあり、去年 昨年、総選挙を終えて企業や消費者の信頼感が改善する兆候が見られます。現在弊社がインド株に対して前向きなスタンスで臨むもう1つの重要な理由は、米国とその貿易相手国の間の貿易問題や関税問題から受ける悪影響が平均より小さい点です。インドから米国への財の輸出がGDPに占める比率はわずか2%ですが、タイは10%、台湾は14%にのぼります。そして、インドの財の輸出は合計で対GDP比12%前後に過ぎません。さらに当面は、インドの極めて大規模なサービス部門の輸出は関税措置の対象になっておらず、実際にはAI採用の初期段階に恩恵を受ける立ち位置にあります。最後に、インド株式は、国内個人投資家の保有比率が高いため、個人投資家の買いが持続して株式市場を下支えると見られます。都市化が進む地域の若年層が牽引する投信積立制度(SIP)への資金流入が、記録を更新しており、5月は30億ドルを超えました。これらが、一貫した資金流入を提供しています。このため、株式に対する国内の需要がすぐに衰えることはないと見られます。これがインドの株式市場に強固な基盤を提供し、新興国市場の平均を若干上回るバリュエーションを支えています。同時に、これによってインド株のグローバル株式市場に対するベータ値は10年前の1.1から低下しており、現在はおよそ0.4と、低水準にあります。しかも、株価のボラティリティは他の...
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  • 地政学リスクにもかかわらず株価が底堅く推移できるのはなぜか
    2025/06/23
    最近の中東情勢に接しても投資家がおおむね平静を保っているのはなぜなのか。弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジスト、マイク・ウィルソンがご説明します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジスト本日は、中東の緊張が米国株式に及ぼす影響の考え方について、弊社の最高投資責任者兼米国チーフ株式ストラテジストのマイク・ウィルソンがお話しします。このエピソードは6月23日 にニューヨークにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。この週末に米国はイランの核燃料濃縮施設に奇襲攻撃を行いました。損害の程度はまだ確認されていませんが、トランプ大統領は、イランによる核兵器開発の取り組みは、完全にとは言わないまでも大幅に縮小させられたと述べています。それが本当なら、このリスクについては変化率がピークに達したとみることができるでしょう。今年第1四半期に米国株式の頭を押さえていた数多くのリスクが最悪期を過ぎたようだと弊社ではみていますが、今回のリスクも多くの点でこの見方に沿うものになっています。不法移民の取り締まり、財政支出削減、関税、AI関連の設備投資減速といった材料はすべて、企業業績予想を引き下げる一因になっていました。 そこから今日までの展開を早送りで見ていくと、こうした材料は悪影響の面でいずれもピークを過ぎており、4月半ばからは業績予想も回復に転じています。実際、収益修正ブレスの回復は史上最大級であり、米国株式が4月7日の週に底を打ってから非常に好調に推移していることの根本的な理由の一つになっています。この週末の出来事を受けて株価急落を予想した方も多かったかもしれませんが、これまでの堅調な展開の理由を考えれば、今朝の株式市場でそうならなかったのもうなずけます。 また、弊社は1950年以降に起きた主な地政学的出来事23件について、株価への影響を調べてみました。すると、多くの方々には意外に思われるかもしれない一方で、ベテラン投資家の間ではよく認識されていることが浮かび上がってきました。実は、地政学的なショックの後には株価の下落ではなく株価の上昇が続くことが多く、ショック後、半年から12ヵ月の間は特にそうなのです。この23件のうち株価が下落したのは5件だけでした。しかも重要なことに、株価が下がったその5件のケースは原油価格の急騰を伴っており、その上昇率は前年同期比で少なくとも75%という非常に高いものでした。今朝の時点で、原油価格は前年同期より10%安い水準にあります。週末の軍事行動の後でもその水準なのです。つまり、株価は向こう6ヵ月から12ヵ月にかけて下落する状況にはないということになります。 とは言え、弊社としては、クオリティの低い小型株よりもクオリティの高い大型株を引き続きお勧めしたいと考えます。この判断はおおむね、長期金利が下げ渋っていることと、米国経済が景気循環の後期にあってFRBが政策金利を据え置いているという事実に基づくものです。仮にこの状況が変わってFRBが利下げを示唆し始めたら、弊社はもっとシクリカルな分野に関心を向けていくことになるでしょう。 弊社は引き続き、電力・インフラ整備関連の設備投資増加が見込まれる資本財・サービス株、今年秋に予定される規制緩和の恩恵を享受する金融株、そして関税の影響を受けず、経済全体へのAI普及に向けた次の投資がなされる分野に注力しているソフトウェア株を選好しています。また当面の原油価格上昇リスクのヘッジ手段として、一般消費財・サービス株よりもエネルギー株を選好しています。 最後までお聴きいただきありがとうございました。今回も「市場の風を読む」Thoughts on the Market 、お楽しみいただけたでしょうか?もしよろしければ、この番組について、ご友人や同僚の皆さんにもシェア...
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  • 中東の緊張が高まる中での石油価格の見通し
    2025/06/18
    中東地域における地政学的変化を踏まえ、今後の石油価格の見通しを3つのシナリオに分けて、弊社グローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツが解説します。このエピソードを英語で聴く。トランスクリプト 「市場の風を読む」(Thoughts on the Market)へようこそ。このポッドキャストでは、最近の金融市場動向に関するモルガン・スタンレーの考察をお届けします。グローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツ今回はイスラエルとイランの緊張が高まる中での石油価格の見通しを弊社グローバル・コモディティ・ストラテジストのマーティン・ラッツが解説します。このエピソードは6月18日 にロンドンにて収録されたものです。英語でお聞きになりたい方は、概要欄に記載しているURLをクリックしてください。ブレント原油の先物カーブに注目している業界観測筋は最近、カーブが滅多に見られないスマイル型であることに気づいたそうです。最初の2、3カ月は下向きのカーブで、その後は26年まで上向きのカーブだというのです。しかし、先週金曜日には一変しました。石油市場の先物カーブは需給バランスの見通しによって様々な形状とをなります。先物カーブが下向きのときは在庫を保有する魅力が実際に非常に乏しく、そのためオペレーターは通常、貯蔵している石油を放出します。市場がこのような構造となるのは、需給がひっ迫し、貯蔵されている石油の放出が実際に必要なときです。逆に、市場が供給過剰のときには石油を在庫として貯蔵する必要があり、先物カーブが上向きとなることでこれが可能になります。つまり、先物カーブはつい最近まで、目先の需給は幾分タイトだけれども、今年後半と26年は大幅な供給過剰となることを物語っていました。ところが先週、中東地域で緊張が高まると、石油業界は強く反応しました。ブレント原油先物の期近物、つまり来月受け渡しの製品が17%近く急騰しただけでなく、すべての受渡月で紛争の影響が生じました。現在では先物カーブ全体が下向きに傾斜しており、これは石油市場が来年の余剰を見込んでいないことを示しています。数日前とは大きく異なります。さて、金曜日の出来事により今後の石油価格の見通しの幅が広まったことは疑う余地がありません。しかし、この先の石油価格の弊社予想を大きく3つのシナリオで説明します。それと一緒に、今後数週間および数カ月間の石油市場を予想する枠組みも示します。まず、最も穏やかなシナリオを考えてみましょう。軍事衝突が起きても石油供給が混乱するとは限らず、主要な産油地域でもそれは同じです。これまでのところ、産油地域からの供給量は減少していません。もし石油・ガスのインフラが攻撃対象から外れたままであれば、石油供給の継続は完全に可能です。その場合、原油価格は現在の1バレル凡そ 約76ドルから、60ドル程度まで下落する可能性があるでしょう。2番目のシナリオは、物理的なインフラへの武力攻撃や制裁によってイランの石油輸出がリスクにさらされることを想定します。米国が2018年に行った「最大限の圧力作戦」で石油供給が減少したことの再現です。イランが輸出能力の大半を失った場合、現時点で弊社が予想している来年の石油市場の余剰をほぼ打ち消す形となるでしょう。その場合、市場は概ね需給が均衡します。需給が均衡した場合、原油価格は1バレル75-80ドルのレンジとなる確率が高いでしょう。3番目は幅広い地域での混乱を想定した最も深刻なシナリオで、原油価格は22年につけた1バレル凡そ約120ドルの高値まで上昇する可能性があります。世界の石油輸送 のかなりの部分が通過するホルムズ海峡など重要な航路を含めて、幅広い湾岸地域の石油インフラがイランの攻撃対象となった場合は、このシナリオが実現する可能性があります。状況はきわめて流動的で、今後の石油価格の見通しとしては大きな幅が考えられます。最も確率が高いと思われるのは最初のシナリオで、弊社はこれを基本ケースとして、最終的に供給の安定を予想しています。ただ、より深刻な混乱が生じる...
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