• 難産を経験したお母さんへ

  • 2025/02/07
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難産を経験したお母さんへ

  • サマリー

  • 難産を経験したお母さんへ 助産師  目黒 和加子 リスナーの皆さん、「難産」と聞いてどんなお産を思い浮かべますか? 陣痛が来ているのに二日経っても三日経っても産まれない、体力と精神力を限界まで使い果たすような難儀なお産。あるいは分娩経過中に母体や胎児に問題が起き、緊急帝王切開になるのを難産と捉える人もいるでしょう。 誰でも楽々と産みたいですよね。でも、しんどい難産を経験する中で、特別な宝物を手にするお母さんもいるのですよ。 真夜中に入院してきた小倉奈々さんは、大阪の実家に里帰りしている初産婦さん。三日前に陣痛が来て来院したのですが、微弱陣痛で子宮口は全く開いていません。ドクターから「陣痛が弱くてまだまだお産になりません。家で休んでいてください」と言われて帰宅しました。 その翌日も来院したのですが、やはり微弱陣痛で子宮口は5ミリしか開いておらず、「入院するのは早過ぎます」と、再び帰されました。 日付けが変わった真夜中、本格的な陣痛が来て三回目の来院。子宮口は3センチ開大し、入院となりました。里帰り出産なので、お母さんが付きっきりでお世話をしています。 小倉さんは痛みと不安で三日間ほとんど眠れず、ヘトヘト、クタクタの状態。入院してから20時間後、子宮口が直径10センチの全開となり、やっと分娩室に入りました。息み始めると、胎児がいい感じで産道を下がり、〝パーン!〟とはじけるように破水しました。さあ、出産まであと一歩!だったのですが…。 破水した直後に内診すると、順調に産道を下がっていたはずの胎児が、何と上がっているではありませんか。おまけに真下を向いていたはずが、横向きになっています。破水の勢いで押し上げられ、頭の向きも変わってしまったのです。 横向きの場合、産道の硬い初産婦が経腟分娩をするのはかなり厳しく、息んでも息んでも胎児は下がってこれません。このまま狭い産道で圧迫を受け続けると、苦しい状態に陥ります。 〝これは困ったことになった。胎児の位置が高すぎて、吸引分娩も鉗子分娩もできない〟。ドクターと私が顔を見合わせ、次の手を考え始めたその時、胎児心拍数がガクンと低下。 トン、トン、トン、トン、と、馬が駆けるようにリズムよく打っていた胎児心拍が、トーーーン、トーーーン、トーーーン……。今にも止まりそう。 「緊急帝王切開や!5分でオペ室準備しろ!」分娩室に響く、医師の慌てた声。スタッフの緊張が一気に高まり、バタバタと走り回っています。 急いで麻酔をかけ、帝王切開が始まりました。切開した子宮の中を見ると、へその緒が赤ちゃんの右肩から左の腋の下にぐるんと巻き付いています。まるで駅伝選手のたすき掛けのよう。胎児をくるんでいた卵膜が破け、勢いよく破水したことで、子宮内圧が急激に変化し、へその緒に引っ張り上げられたのです。次々と困難が起きましたが、お産は無事終わりました。 退院の前日、お部屋を訪ねると、小倉さんは涙を浮かべています。 「どうしたの?」 「母に言われたんです。下から産まれる寸前までいったのに、陣痛と手術のどっちの痛みも経験せなあかんのは、あんたが高校生の時、散々やんちゃして親に心配かけたからや、行いが悪いから難産になったんやって。お姉ちゃんは、一人目は4時間で二人目は2時間、楽々と産んでる。昔から、日頃の行いがお産に出るって言うけど、ほんまやなあって」 「お母さん、厳しいね」 「昔、親に心配かけたのは事実です。でも、めっちゃ頑張ったのに…」 涙が止まらない小倉さん。私は彼女の背中をさすりながら問いかけました。 「今回、お産のスペシャルコースを経験して気づいたことある?」 「私、お産をなめてました。お姉ちゃんが楽々と産んでたから、私も楽勝やって。親戚のおばちゃんから『お産は棺桶に片足を突っ込むことや』って聞いて、大げさやなあって流してたけど、ほんまですね。死ぬかと思いました。赤ちゃんの心拍がゆっくりになって、お医者さんが慌てて帝王切開に切り替えますって言った時、産む私も命がけやけど、赤ちゃんも命がけやって分...
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あらすじ・解説

難産を経験したお母さんへ 助産師  目黒 和加子 リスナーの皆さん、「難産」と聞いてどんなお産を思い浮かべますか? 陣痛が来ているのに二日経っても三日経っても産まれない、体力と精神力を限界まで使い果たすような難儀なお産。あるいは分娩経過中に母体や胎児に問題が起き、緊急帝王切開になるのを難産と捉える人もいるでしょう。 誰でも楽々と産みたいですよね。でも、しんどい難産を経験する中で、特別な宝物を手にするお母さんもいるのですよ。 真夜中に入院してきた小倉奈々さんは、大阪の実家に里帰りしている初産婦さん。三日前に陣痛が来て来院したのですが、微弱陣痛で子宮口は全く開いていません。ドクターから「陣痛が弱くてまだまだお産になりません。家で休んでいてください」と言われて帰宅しました。 その翌日も来院したのですが、やはり微弱陣痛で子宮口は5ミリしか開いておらず、「入院するのは早過ぎます」と、再び帰されました。 日付けが変わった真夜中、本格的な陣痛が来て三回目の来院。子宮口は3センチ開大し、入院となりました。里帰り出産なので、お母さんが付きっきりでお世話をしています。 小倉さんは痛みと不安で三日間ほとんど眠れず、ヘトヘト、クタクタの状態。入院してから20時間後、子宮口が直径10センチの全開となり、やっと分娩室に入りました。息み始めると、胎児がいい感じで産道を下がり、〝パーン!〟とはじけるように破水しました。さあ、出産まであと一歩!だったのですが…。 破水した直後に内診すると、順調に産道を下がっていたはずの胎児が、何と上がっているではありませんか。おまけに真下を向いていたはずが、横向きになっています。破水の勢いで押し上げられ、頭の向きも変わってしまったのです。 横向きの場合、産道の硬い初産婦が経腟分娩をするのはかなり厳しく、息んでも息んでも胎児は下がってこれません。このまま狭い産道で圧迫を受け続けると、苦しい状態に陥ります。 〝これは困ったことになった。胎児の位置が高すぎて、吸引分娩も鉗子分娩もできない〟。ドクターと私が顔を見合わせ、次の手を考え始めたその時、胎児心拍数がガクンと低下。 トン、トン、トン、トン、と、馬が駆けるようにリズムよく打っていた胎児心拍が、トーーーン、トーーーン、トーーーン……。今にも止まりそう。 「緊急帝王切開や!5分でオペ室準備しろ!」分娩室に響く、医師の慌てた声。スタッフの緊張が一気に高まり、バタバタと走り回っています。 急いで麻酔をかけ、帝王切開が始まりました。切開した子宮の中を見ると、へその緒が赤ちゃんの右肩から左の腋の下にぐるんと巻き付いています。まるで駅伝選手のたすき掛けのよう。胎児をくるんでいた卵膜が破け、勢いよく破水したことで、子宮内圧が急激に変化し、へその緒に引っ張り上げられたのです。次々と困難が起きましたが、お産は無事終わりました。 退院の前日、お部屋を訪ねると、小倉さんは涙を浮かべています。 「どうしたの?」 「母に言われたんです。下から産まれる寸前までいったのに、陣痛と手術のどっちの痛みも経験せなあかんのは、あんたが高校生の時、散々やんちゃして親に心配かけたからや、行いが悪いから難産になったんやって。お姉ちゃんは、一人目は4時間で二人目は2時間、楽々と産んでる。昔から、日頃の行いがお産に出るって言うけど、ほんまやなあって」 「お母さん、厳しいね」 「昔、親に心配かけたのは事実です。でも、めっちゃ頑張ったのに…」 涙が止まらない小倉さん。私は彼女の背中をさすりながら問いかけました。 「今回、お産のスペシャルコースを経験して気づいたことある?」 「私、お産をなめてました。お姉ちゃんが楽々と産んでたから、私も楽勝やって。親戚のおばちゃんから『お産は棺桶に片足を突っ込むことや』って聞いて、大げさやなあって流してたけど、ほんまですね。死ぬかと思いました。赤ちゃんの心拍がゆっくりになって、お医者さんが慌てて帝王切開に切り替えますって言った時、産む私も命がけやけど、赤ちゃんも命がけやって分...

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