• 海が割れた日〜1945年、大災害がちいさな街を襲った・・・

  • 2025/01/15
  • 再生時間: 15 分
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海が割れた日〜1945年、大災害がちいさな街を襲った・・・

  • サマリー

  • 愛知県高浜市を舞台にしたボイスドラマです。 主人公はエイミー25歳。高浜市のケアハウス(軽費老人ホーム)で働く職員。介護福祉士と社会福祉士の資格を持っている。働き始めてから今年で5年目。明るくて元気が取り柄。毎年恒例のケアハウス夏祭りの企画と運営を担当する・・・ ミサトは89歳。ケアハウスに入所して10年。普段から口数は少ない。親しくなった入所者たちはどんどん先に逝き、仲良くなった職員はどんどん転職していなくなっていく・・・(CV:桑木栄美里) 【ストーリー】 <シーン1/ケアハウス出勤> ■SE〜朝のイメージ(小鳥のさえずり) 「おはようございま〜す!」 「ちょっ、みんな、もう起きてんの?」 「新聞配達より早いんじゃない?」 「朝ごはんまで、まだ1時間以上あるんだよー」 「まあゆっくり新聞読んで、くつろいでてー」 「さ、今日もがんばるぞ、私!」 私は、エイミー。 高浜市内のケアハウスで働いている。 あ、ケアハウスっていうのは、高齢者施設のひとつ。 自宅で生活するのが難しい高齢者が 食事や洗濯のサービスを受けながら暮らしているの。 またの名を、経費老人ホームC型。 まずは、昨日の宿直と夜勤から申し送りしてもらってと。 あー、マサヒロさん。夜中にまた7回もコールしたのね。 まあ、でも大事でなくてよかったか〜。 ユウジロウさんは、おもらししちゃったの。 入所したばかりで、緊張してるのかな。 ミサトさんは、37度5分の熱発? 夏風邪かしら。ちょっと心配。 え?はい、所長 なんですか? 「夏祭りの企画〜!? そんなん、もっと適任者にお願いしてくださいよ〜 私、社福士と介福の資格両方持ってるから 相談も聞いて、介助もしなくちゃいけないんですよ」 「今年は入所者・職員全員参加〜?」 「そんな、ご無体なこと言われても〜」 「来年戦後80年だから戦争体験の話?」 「来年80年だったら来年やればいいじゃないですかぁ」 「そうじゃん、いまうちの施設、戦争を体験してる80歳以上の人なんて、 1人しかいませんよぉ」 「じゃあ、みんながその人から聞けばいい?」 「えー、84歳のミサトさん、人前でなんて絶対しゃべれませんよぉ」 「ちょっと。ちょっと所長、どこ行くんですかぁ」 逃げたな。 仕方ない、これも仕事。 朝食介助のときに、ミサトさんに話してみるか。 <シーン2/朝食風景> ■SE〜朝食のガヤ 「話すことなんてないよ」 予想通り。 けんもほろろ。 そりゃそうだ。 普段から口下手で人と話すのが苦手なミサトさん。 こやって言うに決まってんじゃ〜ん。 だけど。 そうも言っていられない。夏祭りは1週間後。 あの手この手できりくずさないと。 「うるさいなあ」 「ほっといてくれ」 やっぱだめか。 「戦争のことなんて覚えとらんて」 お。これは覚えてるときの言い方。 あと一歩。 「10歳のとき?」 よしっ。ヨイショ攻撃全開。 「そりゃ可愛かったさ」 「国民学校の初等科で私より可愛い娘はおらんかったわ」 終戦の年だよな。 「戦争?あんなもんクソじゃ」 「馬鹿が始めた負け戦じゃ」 おお。さすがリベラル。でも、ご家族は? 「ああ、みんな死んだよ」 「おじいさまは南方へ行ったと思ったらすぐに戦死の紙が届いた」 「紙っきれ一枚じゃ」 「とうさまは知覧の特攻隊じゃ」 特攻!それはまた・・・ 「でもな。そんなんわしらの預かり知らぬ遠い世界での話」 「目の前。高浜ではもっとつらいことが起きたんじゃ」 え? 高浜は空襲なんてなかったはずじゃ・・ 「戦争よりもっと辛いことがあった」 戦争より辛いこと? それって・・ 「三河地震じゃ」 三河地震? 知らない。 戦争特集でも全然ニュースにならないし、そんな大きな地震だったの? 朝食の時間が終わる。 ミサトさんの口はまた、貝のように閉じてしまった。 ミサトさんの車椅子を部屋まで押していく。 ベッドへ移乗しようとしたら、このままでいいと言う。 横になると寝てしまうからだそうだ。 ミサトさんは1人用の茶箪笥に置かれた写真立てを眺めている。 セピア色の印画紙には、 小さな女の子とその兄、父母と祖父の5人が並んで写っていた。 ミサトさんの家族かな。 一度丸...
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あらすじ・解説

愛知県高浜市を舞台にしたボイスドラマです。 主人公はエイミー25歳。高浜市のケアハウス(軽費老人ホーム)で働く職員。介護福祉士と社会福祉士の資格を持っている。働き始めてから今年で5年目。明るくて元気が取り柄。毎年恒例のケアハウス夏祭りの企画と運営を担当する・・・ ミサトは89歳。ケアハウスに入所して10年。普段から口数は少ない。親しくなった入所者たちはどんどん先に逝き、仲良くなった職員はどんどん転職していなくなっていく・・・(CV:桑木栄美里) 【ストーリー】 <シーン1/ケアハウス出勤> ■SE〜朝のイメージ(小鳥のさえずり) 「おはようございま〜す!」 「ちょっ、みんな、もう起きてんの?」 「新聞配達より早いんじゃない?」 「朝ごはんまで、まだ1時間以上あるんだよー」 「まあゆっくり新聞読んで、くつろいでてー」 「さ、今日もがんばるぞ、私!」 私は、エイミー。 高浜市内のケアハウスで働いている。 あ、ケアハウスっていうのは、高齢者施設のひとつ。 自宅で生活するのが難しい高齢者が 食事や洗濯のサービスを受けながら暮らしているの。 またの名を、経費老人ホームC型。 まずは、昨日の宿直と夜勤から申し送りしてもらってと。 あー、マサヒロさん。夜中にまた7回もコールしたのね。 まあ、でも大事でなくてよかったか〜。 ユウジロウさんは、おもらししちゃったの。 入所したばかりで、緊張してるのかな。 ミサトさんは、37度5分の熱発? 夏風邪かしら。ちょっと心配。 え?はい、所長 なんですか? 「夏祭りの企画〜!? そんなん、もっと適任者にお願いしてくださいよ〜 私、社福士と介福の資格両方持ってるから 相談も聞いて、介助もしなくちゃいけないんですよ」 「今年は入所者・職員全員参加〜?」 「そんな、ご無体なこと言われても〜」 「来年戦後80年だから戦争体験の話?」 「来年80年だったら来年やればいいじゃないですかぁ」 「そうじゃん、いまうちの施設、戦争を体験してる80歳以上の人なんて、 1人しかいませんよぉ」 「じゃあ、みんながその人から聞けばいい?」 「えー、84歳のミサトさん、人前でなんて絶対しゃべれませんよぉ」 「ちょっと。ちょっと所長、どこ行くんですかぁ」 逃げたな。 仕方ない、これも仕事。 朝食介助のときに、ミサトさんに話してみるか。 <シーン2/朝食風景> ■SE〜朝食のガヤ 「話すことなんてないよ」 予想通り。 けんもほろろ。 そりゃそうだ。 普段から口下手で人と話すのが苦手なミサトさん。 こやって言うに決まってんじゃ〜ん。 だけど。 そうも言っていられない。夏祭りは1週間後。 あの手この手できりくずさないと。 「うるさいなあ」 「ほっといてくれ」 やっぱだめか。 「戦争のことなんて覚えとらんて」 お。これは覚えてるときの言い方。 あと一歩。 「10歳のとき?」 よしっ。ヨイショ攻撃全開。 「そりゃ可愛かったさ」 「国民学校の初等科で私より可愛い娘はおらんかったわ」 終戦の年だよな。 「戦争?あんなもんクソじゃ」 「馬鹿が始めた負け戦じゃ」 おお。さすがリベラル。でも、ご家族は? 「ああ、みんな死んだよ」 「おじいさまは南方へ行ったと思ったらすぐに戦死の紙が届いた」 「紙っきれ一枚じゃ」 「とうさまは知覧の特攻隊じゃ」 特攻!それはまた・・・ 「でもな。そんなんわしらの預かり知らぬ遠い世界での話」 「目の前。高浜ではもっとつらいことが起きたんじゃ」 え? 高浜は空襲なんてなかったはずじゃ・・ 「戦争よりもっと辛いことがあった」 戦争より辛いこと? それって・・ 「三河地震じゃ」 三河地震? 知らない。 戦争特集でも全然ニュースにならないし、そんな大きな地震だったの? 朝食の時間が終わる。 ミサトさんの口はまた、貝のように閉じてしまった。 ミサトさんの車椅子を部屋まで押していく。 ベッドへ移乗しようとしたら、このままでいいと言う。 横になると寝てしまうからだそうだ。 ミサトさんは1人用の茶箪笥に置かれた写真立てを眺めている。 セピア色の印画紙には、 小さな女の子とその兄、父母と祖父の5人が並んで写っていた。 ミサトさんの家族かな。 一度丸...
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