• エミリー・ディキンソン「自分の居場所を決めるのは その心」

  • 2022/04/14
  • 再生時間: 11 分
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エミリー・ディキンソン「自分の居場所を決めるのは その心」

  • サマリー

  • こんにちは。 日ごと気温が、急上昇したり急降下したり、何を着ればよいやら毎日悩んでいましたが、春のご機嫌はようやく落ち着いたようですね。クローゼットから出しては、しまってを繰り返していた冬の服も、やっとクリーニングに出しました。身にまとうものが薄くなると、気持ちも少し軽くなったような気がします。おかわりありませんか。 1年ぶりに、春ものの服を出し、ふと冷静に並べて眺めてみたところ、何だかどれも、似ている服ばかり。 たまには気分を変え、ちょっと違うタイプの服を着てみたくなり、さっそく買いに出たのですが、いいかなと手に取る服は、またいつもと同じ感じの服……。ひとつ隣の店の「あの服」を選んだら、知らない自分が現れたりしてと妄想しながら、結局、何も買わずに帰ってきました。 「自分らしさ」というものは、いつも私の味方で、心地よくも心強い、一番落ち着く「居場所」です。それはきっと、これまで選んできたものの数々……着るもの、食べるもの、行くところ、話すことば……ひとつ、ひとつから出来上がっているのですよね。 知らず知らず、「自分ぽいもの」を選び続け、出来上がったのは、脆そうで実は簡単には崩れない「自分らしさ」。これに寄りかかって過ごすことは、とても楽ではありますが、たまに窮屈で、ちょっと味気なく感じることがあります。 「自分らしさ」の外にもある、「好きなもの」と出会わないまま、この一生を終えていいのかなと、思ったりもして。 私の友人で先輩でもある方が、60代で大型2輪の免許を取り、ご両親の介護を経て、70代直前で念願のハーレーに乗るようになりました。 日ごろは、晴れの日も雨の日も、着物がユニフォームのような彼女。身にまとうもの、一枚でも薄く少なくしたい酷暑の待ち合わせにも、凛とした着物姿で現れました。私が不躾に、「暑くないのですか」と尋ねても、「夏の着物は、見る方に涼を分けるものなのよ」と微笑む。その笑みに、真夏の風に揺れる、風鈴の気持ちを見たような気がしました。 そんな彼女が、着慣れた着物を脱ぎ、黒い革ジャンを着て、結い上げた髪をほどいてヘルメットをかぶる。 白い足袋のかわりにレザーブーツを身につけて、自分の身体より大きなバイクにまたがり、風を切って走ります。 着物の裾にすら、わずかな風も起こさず歩く彼女が、ブルルン、ドロロン、ズドドドドと、地鳴りのようなエンジンを吹かし、爆音の彼方に、新たな自分を見つけて。 あふれかえるものの中、手に取れるものも、目に見えないものも、どれもいいけど、どれでもない。自分が欲しいもの、求めているものすら、分からなくなることがあります。「選ぶ」感性が、すっかり硬直しワンパターンに陥っている私にとって、彼女の激変は、とても眩しいものでした。 私たちが選べないのは、生まれおちる場所と、生きる時代。 でも、ある時、ある場所で、 自分の命を得たそのあとは、選択の連続です。 選んだもの、同時に、選ばなかったもの、 そのひとつ、ひとつで自分が作られ、 周りの世界は、彩られてゆきます。 自分らしさの中で、また、外で、 「ここに決めた」や「あなたに決めた」と、腹をくくる。 その瞬間、閉じながら、開いてゆく内なる世界。 今日はそんな、「心決めた瞬間」を思わせる詩を送ります。 The Soul selects her own Society - Then - shuts the Door - To her divine Majority - Present no more - Unmoved - she notes the Chariots - pausing- At her low Gate - Unmoved - an Emperor be kneeling Upon her Mat - I've known her - from an ample nation - Choose One - Then - close the Valves of her attention - Like Stone - 自分の居場所を決めるのは その心 扉を閉じたら 与えられた多くのものに 背を向けて 心動かされない 小さな門の前に 迎えが来ていることに 気づいても    心揺れたりしない その入り口で 立派な人が 膝をついて 待っていても 私には分かる 多くの生きる選択肢から ひとつを選んだら それからは もう何も見えない 聞こえない かたい石のように閉ざす ...
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あらすじ・解説

こんにちは。 日ごと気温が、急上昇したり急降下したり、何を着ればよいやら毎日悩んでいましたが、春のご機嫌はようやく落ち着いたようですね。クローゼットから出しては、しまってを繰り返していた冬の服も、やっとクリーニングに出しました。身にまとうものが薄くなると、気持ちも少し軽くなったような気がします。おかわりありませんか。 1年ぶりに、春ものの服を出し、ふと冷静に並べて眺めてみたところ、何だかどれも、似ている服ばかり。 たまには気分を変え、ちょっと違うタイプの服を着てみたくなり、さっそく買いに出たのですが、いいかなと手に取る服は、またいつもと同じ感じの服……。ひとつ隣の店の「あの服」を選んだら、知らない自分が現れたりしてと妄想しながら、結局、何も買わずに帰ってきました。 「自分らしさ」というものは、いつも私の味方で、心地よくも心強い、一番落ち着く「居場所」です。それはきっと、これまで選んできたものの数々……着るもの、食べるもの、行くところ、話すことば……ひとつ、ひとつから出来上がっているのですよね。 知らず知らず、「自分ぽいもの」を選び続け、出来上がったのは、脆そうで実は簡単には崩れない「自分らしさ」。これに寄りかかって過ごすことは、とても楽ではありますが、たまに窮屈で、ちょっと味気なく感じることがあります。 「自分らしさ」の外にもある、「好きなもの」と出会わないまま、この一生を終えていいのかなと、思ったりもして。 私の友人で先輩でもある方が、60代で大型2輪の免許を取り、ご両親の介護を経て、70代直前で念願のハーレーに乗るようになりました。 日ごろは、晴れの日も雨の日も、着物がユニフォームのような彼女。身にまとうもの、一枚でも薄く少なくしたい酷暑の待ち合わせにも、凛とした着物姿で現れました。私が不躾に、「暑くないのですか」と尋ねても、「夏の着物は、見る方に涼を分けるものなのよ」と微笑む。その笑みに、真夏の風に揺れる、風鈴の気持ちを見たような気がしました。 そんな彼女が、着慣れた着物を脱ぎ、黒い革ジャンを着て、結い上げた髪をほどいてヘルメットをかぶる。 白い足袋のかわりにレザーブーツを身につけて、自分の身体より大きなバイクにまたがり、風を切って走ります。 着物の裾にすら、わずかな風も起こさず歩く彼女が、ブルルン、ドロロン、ズドドドドと、地鳴りのようなエンジンを吹かし、爆音の彼方に、新たな自分を見つけて。 あふれかえるものの中、手に取れるものも、目に見えないものも、どれもいいけど、どれでもない。自分が欲しいもの、求めているものすら、分からなくなることがあります。「選ぶ」感性が、すっかり硬直しワンパターンに陥っている私にとって、彼女の激変は、とても眩しいものでした。 私たちが選べないのは、生まれおちる場所と、生きる時代。 でも、ある時、ある場所で、 自分の命を得たそのあとは、選択の連続です。 選んだもの、同時に、選ばなかったもの、 そのひとつ、ひとつで自分が作られ、 周りの世界は、彩られてゆきます。 自分らしさの中で、また、外で、 「ここに決めた」や「あなたに決めた」と、腹をくくる。 その瞬間、閉じながら、開いてゆく内なる世界。 今日はそんな、「心決めた瞬間」を思わせる詩を送ります。 The Soul selects her own Society - Then - shuts the Door - To her divine Majority - Present no more - Unmoved - she notes the Chariots - pausing- At her low Gate - Unmoved - an Emperor be kneeling Upon her Mat - I've known her - from an ample nation - Choose One - Then - close the Valves of her attention - Like Stone - 自分の居場所を決めるのは その心 扉を閉じたら 与えられた多くのものに 背を向けて 心動かされない 小さな門の前に 迎えが来ていることに 気づいても    心揺れたりしない その入り口で 立派な人が 膝をついて 待っていても 私には分かる 多くの生きる選択肢から ひとつを選んだら それからは もう何も見えない 聞こえない かたい石のように閉ざす ...

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