『『桃花流水〜夢に咲く花』』のカバーアート

『桃花流水〜夢に咲く花』

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飛騨高山・国府町を舞台にした、春と初恋の物語。ヒダテン!ボイスドラマ第17弾『桃花流水〜夢に咲く花』がついに公開!春のピーチロードで出会ったのは、東京からやってきた農業大学の青年・ショウタ。桃の花に導かれるように、彼とももは少しずつ距離を縮めていきます。しかし彼には、ある“秘密”があって――国府町の自然、伝承、そして飛騨桃の魅力をたっぷり詰め込んだ、甘く切ない春の出会いと別れの物語。公式サイト&Spotify・Amazon・Apple Podcastなど各種配信サービスにて公開中!小説として「小説家になろう」でも全文公開しています。(CV:高松志帆)【ストーリー】[シーン1:4月/満開の桃の花(ピーチロード)】◾️SE:平地の小鳥/高山線の通りすぎる音〜自転車の急ブレーキの音「大丈夫ですか!?」「あ、はい、大丈夫です!」夕暮れが近いピーチロード。満開の桃の花の下。突然現れた彼は、道の脇で、桃の木にもたれかかるように倒れていた。「子狐を避けようとしたら転倒しちゃって」「子狐・・・?」「まさか、こんなところに子狐なんて・・」「別に不思議じゃないわ」「え・・」「安国寺のきつね小僧って民話、知らないの?」「なんだい、それ?」「あなた・・・高山の人じゃないのね」「うん、そうだよ」彼はお尻についた土を振り払って、よいしょっと立ち上がる。Eバイクのスタンドも立て直して。私も、乗っていたEバイクを道の端っこに停める。「東京からきたんだ」「へえ〜。どこに泊まってるの?古川?市街地?」「宇津江四十八滝」「キャンプ場?アウトドア派なんだねー」「きみはここ、国府の人?」「まあね。私、もも。よろしくね」「もも?いい名前!よろしく。僕はショウタ」「ショウタこそ、いい名前。私、ここが高山市になる前から、ずうっと国府に住んでるの」「そうなんだ。いいところだね」「当然でしょ。見ての通り」「桜と桃の花が一緒に見られるなんて」「そう。この季節だけの特権。いいときに来たわね」「本当にきれいだ」「やだ。照れるじゃない」「って桃の花のことだけど・・」「あ、そうか・・・桜野公園は行った?」「うん、宮川(みやがわ)沿いに通ってきたけど、明るいうちに桃の花が見たくて」「どうして?」「桜より桃の花の方が好きなんだ」「へえ〜、変わってるわね」「春の光をあつめて、淡く、やわらかな色をひらく」「ほう〜」「風が花びらを撫でるたびに、甘い香りが漂う」(ゴクリ)※唾を飲み込む「ちょっとちょっと、ショウタって詩人なの?」「いや違うけど、それほど好きってことさ」「好き・・・?」「あ、ごめん。ちょっとカッコつけすぎちゃった」「ううん。よかったわ。ねえ、もっと、ショウタのこと教えて」木陰を選んで、また腰をおろす彼。私も横に並んで、ピーチロードの端っこに座る。風になびく飛騨桃の花びら。暮れ行く前の春の日差しが、私たちの顔に花の影を落としていた。彼は東京の農業大学へ通う一年生なんだって。でも父親は農業の道へ進むことに猛反対。ときどき喧嘩しては家出しているらしい。国府は今回が初めて。でも、どうして高山?どうして国府?「ちょっとだけ、縁があるんだ」「どんな縁?」「ん〜、ナイショ」「もう〜」「さぁて、暗くなる前に出発しようかな、桜も見たいし」「あー、浮気するんだぁ」「なに言ってんだか」「キャンプ用品とか荷物は?」「レンタカーの中。駅前の駐車場だよ」「用意周到ね」「ソロキャンプは慣れてるから」そう言って笑う彼の口元から八重歯が覗く。よく見ると、キュートな感じ・・・かな。「きみの家はこのへん?」「ううん、うちは国府町宇津江」「それって・・・」「そう、ショウタがこれから行くところ」「宇津江四十八滝に住んでるの?」「なわけないでしょ。自然公園の近くよ」「じゃあ送るよ、一緒にいこう」「いいわ」ショウタは笑顔で親指を立てる。一面を淡いピンクに染めた、飛騨桃たちのピーチロード。Eバイクで並んで走る私たちの目の前を、花びらが静かに舞い降りる。後方から子狐の鳴き声が聞こえたような気がした。[シーン2:5〜6月/クリンソウ...
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